マーケティングでよく耳にする「ニーズ」と「ウォンツ」
人はどんなときにモノを欲しているのでしょうか?
人は何を求めているのでしょうか?
そして、売れる製品とは一体どんなモノなのでしょうか?
マーケティングで効果的な戦略を立てるためは、この「ニーズ」と「ウォンツ」の定義や違いをしっかりと理解しておく必要があります。
「ニーズ」と「ウォンツ」の解釈の仕方はいくつか存在していますが、今回はアメリカの現代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーが提唱した「ニーズ」と「ウォンツ」の定義を軸にして解説していきます。
「ニーズ」と「ウォンツ」は、どちらも文字通り解釈すれば「欲しているもの」ですが、両者は似ているようで違います。
「ニーズ」とは
「ニーズ」とは、消費者が何らかの欠乏や不足を満たしたいと感じていて、何かで満たしたいと思っている状態のことです。
ニーズには2種類あり、顕在的ニーズと潜在的ニーズに分類されます。
- 顕在的なニーズ…消費者が自覚しているもの
- 潜在的なニーズ…消費者自身も気づいていないが心の底に存在しているもの
「ウォンツ」とは
「ウォンツ」とは、ニーズを満たしてくれるモノや機能が欲しいという欲求のことです。
さらにウォンツは3種類に分類されます。
- 基本ウォンツ…具体的な解決策を求めていること
- 条件ウォンツ…解決のための手段を選別する条件や指標のこと
- 期待ウォンツ…満たされて当たり前と考えていること
欠乏感や不足感を満たしたい状態の「ニーズ」が先にあり、そのニーズを満たすための手段でありニーズをさらに具体的にしたものが「ウォンツ」です。
たとえば、通勤のため毎日30分かけて歩いている人が『通勤時間をもう少し短縮したい!』と思う、不満を解消するために湧いてくる欲求がニーズ。
通勤時間の長さを解消するための具体的な目的や手段(車や自転車など)がウォンツです。
このウォンツは消費者によって違ってきます。
先の例えでいうと、通勤時間短縮のために車が欲しいと思う人の中でも、『高級車がほしい!』『軽自動車で十分』『かわいい見た目の車がいいな』というようにそれぞれ意見が別れるはずです。
このように、ニーズを解消するためのウォンツは1つだけではなく無数に存在しています。
ニーズには、消費者自身が必要性を明確に感じていない表現できない、表面化していない潜在的ニーズがあります。
モノが沢山溢れているモノあまりの現代は、顕在化されたニーズに対してのウォンツは簡単に手に入るようになりました。
一昔前と違って、必要最低限のモノや似たような商品やサービスはそこら中に存在していますよね。
顕在化されたニーズに関しては、ライバルとの差別化を図ることはすでに難しくなっています。
これからのマーケティングで重要になってくるのは、消費者自身も気づいていない潜在的ニーズとウォンツを見つけ出し顕在化させること。
顧客が商品を見た時に『これまで気づかなかったけど、こんなのあったら便利でいいよね』と思われる製品開発をする、ということです。
潜在的ニーズとウォンツを顕在化させることで、ライバルとの差別化を図ることができ、独自性を確立する、ヒットする商品を産み出すチャンスにつながります。
そのためには、顧客の潜在敵ニーズをしっかりと把握したうえで先取りをし開発することです。
しかし、顧客のニーズやウォンツを理解することはそう簡単ではありません。
アメリカの現代マーケティングの父フィリップ・コトラーは、「顧客のニーズやウォンツを理解することは必ずしも簡単ではない。ニーズがあっても顧客が明確に意識していない場合や表現できない場合は、顧客の言葉の意味をくみ取らなければならない」と言っています。
顕在化されていない顧客の言葉や意識を吸い上げるために、アンケートやインタビューを行ったり、街頭調査を行ったりと、顧客目線でしっかり考えることが重要になってきます。
ニーズとウォンツの関係性でわかる顧客属性によって、マーケティング施策は変わってきます。
【顧客属性】
例えば、ライバルも手をつけていない顧客のニーズにぴったりの製品を開発したとします。
上記イラストの「まだまだ」に分類される顧客に対しては、顧客自身のニーズとウォンツも低く、商品を欲しいと思ってないし必要性も感じていないため注目されません。
「まだまだ」の顧客に対しては、顧客自身にニーズを自覚させウォンツに転換させていくために、無料サンプル配布や広告出稿などの施策を行い商品を認知してもらう必要があります。
商品認知度をあげて、いつか商品に興味を持ってもらえる「おなやみ」「そのうち」に変わるように施策を行います。
「今すぐ」に分類される顧客は、すでにニーズもウォンツも高い位置にいます。
ニーズを満たすウォンツが顧客自身しっかり自覚しているので、「自社商品のメリット、得られるベネフィットを強調」「自社商品を買うべき理由」「購入までの導線をわかりやすくシンプルにする」などの施策をします。
「おなやみ」に分類される顧客は、ニーズは高いものの、ウォンツは低い位置にいます。
必要性は明確に感じているが、具体的な解決策はまだ決めていないため、あなたのニーズを満たすには自社商品がおすすめであることを知ってもらう必要があります。
「そのうち」に分類される顧客は、ニーズは低いけれどウォンツは高い位置にいます。
『商品は欲しいけど今すぐ必要じゃないしなぁ』という状態なので、商品購入のための動機付けをする、ニーズを高める施策を行います。
このようにニーズとウォンツを整理し、分類した顧客属性に合わせたマーケティング施策を行っていきましょう。